君への愛は嘘で紡ぐ
ベッドを降りながら言うと、柳は軽く一礼して部屋を出た。


壁にかけていたセーラー服に手を伸ばす。
膝上丈の紺色のスカートを履き、白ベースで紺色の襟のトップスを着る。
仕上げに、赤いスカーフを巻く。


部屋を出て洗面所に行き、顔を洗う。
薄化粧をし、肩の辺りで切りそろえられた黒髪に櫛を通す。


もう一度鏡で姿を確認し、食卓に向かう。


「お父様はもうお仕事?」


椅子に座って柳が料理を運んでくれるのを待ちながら、父の席が空いていることに気分が落ちる。


「いえ、旦那様は先程帰宅なさいましたので、現在はお休み中かと」
「……そう」


目の前に料理が並び、箸を持つ。


「いただきます」


一人で静かにとる食事は、美味しくない。
柳の腕はたしかで、いつもは絶品だが、どうしても一人になると途端に味がしなくなる。


それでも作ってくれた柳に失礼だと思い、完食した。


私の部屋から鞄を取ってきてくれていたメイドの奈子さんが少しだけ髪を整えてくれて、鞄を渡してくれた。


靴を履き、振り返る。


「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」


柳と奈子さんは揃った角度で頭を下げた。
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