君への愛は嘘で紡ぐ
それに負けじと睨み返していたら、お父様は私のペン立てにあるハサミを手にした。


「お、お父様……?」
「旦那様、それは……!」


私の怯えた声も、柳の慌てた声も届かなくて、お父様は乱暴に私の髪を掴むと、赤色の髪を切り落とした。


「あ……」


落ちた毛先を見て、言葉を失う。
まだ信じられなくて、しゃがんでそれを拾う。


本当に、切られてしまった。


泣きそうになるのを堪え、お父様を見上げる。
さっきと全く表情が変わっていない。


「次は転校させる」


お父様は柳にハサミを渡し、その場を離れた。


「あの、お嬢様……」
「……出てって」


目に溜まった涙を、落ちてしまう前に拭う。


「しかし……」
「聞こえなかった?出ていきなさい、柳。今は一人になりたいの」


柳はペン立てにハサミを戻し、何も言わずに部屋を出た。


厳しいことも、怒られることも、なんとなく予想していた。


まさか、切られるとは。


ここでは私の願望は、この髪のようにことごとく切り落とされていくのだろう。
まるで、籠に閉じ込められているようだ。


私には、自由がない。
お父様の言うことに従うことが最善の策なのだ。


だが、本当にそれでいいのだろうか。
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