君への愛は嘘で紡ぐ
美容師さんは片付けが終わったのか、鏡越しに私の目を見ている。
「だけど、何色がいいのか、どういうふうに染めるのか、全然決められなくて……」
だから、笠木さんに決めてもらった。
「実際に髪を染めた自分を見て、不思議な感覚でした。知らない自分に出会ったみたいで……どう言い表せばいいのか、わかりませんでした」
すると、美容師さんは後ろから抱きしめて来た。
「小野寺さん、可愛いねえ。そっか、そうだったんだね。気を使わせてごめん」
「いえ、こちらこそ……」
美容師さんが離れると、私は席を立つ。
そのままレジに向かう。
別の美容師さんが私の荷物を渡してくれて、財布を取り出した。
「やっぱりさ、お客さんの満足した顔が見たくてこの仕事してるから、気になっちゃったんだよね。小野寺さん、気に入ってくれなかったのかなとか、もっといいアレンジができたんじゃないかとかね」
それを聞くと、本当に申し訳ないことをした。
言葉に表せなくても、簡単な言葉でも、伝えるべきだった。
財布をカバンに戻し、まっすぐ彼女を見つめる。
「今日はありがとうございました」
ずっと笑っていなかったせいで笑顔が固くなってしまったような気がしたけれど、彼女が笑い返してくれたことで安心して店を後にした。
「だけど、何色がいいのか、どういうふうに染めるのか、全然決められなくて……」
だから、笠木さんに決めてもらった。
「実際に髪を染めた自分を見て、不思議な感覚でした。知らない自分に出会ったみたいで……どう言い表せばいいのか、わかりませんでした」
すると、美容師さんは後ろから抱きしめて来た。
「小野寺さん、可愛いねえ。そっか、そうだったんだね。気を使わせてごめん」
「いえ、こちらこそ……」
美容師さんが離れると、私は席を立つ。
そのままレジに向かう。
別の美容師さんが私の荷物を渡してくれて、財布を取り出した。
「やっぱりさ、お客さんの満足した顔が見たくてこの仕事してるから、気になっちゃったんだよね。小野寺さん、気に入ってくれなかったのかなとか、もっといいアレンジができたんじゃないかとかね」
それを聞くと、本当に申し訳ないことをした。
言葉に表せなくても、簡単な言葉でも、伝えるべきだった。
財布をカバンに戻し、まっすぐ彼女を見つめる。
「今日はありがとうございました」
ずっと笑っていなかったせいで笑顔が固くなってしまったような気がしたけれど、彼女が笑い返してくれたことで安心して店を後にした。