君への愛は嘘で紡ぐ
「服を選んでいただいたお礼にと思ったのですが……」
「私たち、円香ちゃんに似合う服を選んだだけで、プレゼントはしていないから。気持ちだけで十分だよ」
由実さんはそう言うと、私の背中を押して店を出た。
誰かに何かをプレゼントしたいと思ったのは初めてで、後ろ髪を引かれる思いだった。
ときどき置いていかれそうになりながら、由実さんが行きたいと言っていた喫茶店に到着した。
一番にドアを開けた瑞希さんが立ち止まったせいで、由実さんも私も中に入れない。
「ちょっと瑞希、早く中に」
「なんであんたがここにいる?」
由実さんの言葉を遮って発せられたそれは、由実さんに向かって言ったものではなかった。
瑞希さんの言うあんたが誰なのか気になり、なんとか店内が見れないかと体を動かす。
「笠木」
その名前で体の動きは止まる。
「笠木さん……?」
今笠木さんに会うのは嬉しいよりも申しわけない思いのほうが強い。
気付かれる前に帰りたい。
「あれ、お嬢様。もう髪切ったのか」
私は笠木さんの姿を見ることができなかったのに、一瞬で見つかってしまった。
諦めて背筋を伸ばす。
「……お父様に、怒られました」
「私たち、円香ちゃんに似合う服を選んだだけで、プレゼントはしていないから。気持ちだけで十分だよ」
由実さんはそう言うと、私の背中を押して店を出た。
誰かに何かをプレゼントしたいと思ったのは初めてで、後ろ髪を引かれる思いだった。
ときどき置いていかれそうになりながら、由実さんが行きたいと言っていた喫茶店に到着した。
一番にドアを開けた瑞希さんが立ち止まったせいで、由実さんも私も中に入れない。
「ちょっと瑞希、早く中に」
「なんであんたがここにいる?」
由実さんの言葉を遮って発せられたそれは、由実さんに向かって言ったものではなかった。
瑞希さんの言うあんたが誰なのか気になり、なんとか店内が見れないかと体を動かす。
「笠木」
その名前で体の動きは止まる。
「笠木さん……?」
今笠木さんに会うのは嬉しいよりも申しわけない思いのほうが強い。
気付かれる前に帰りたい。
「あれ、お嬢様。もう髪切ったのか」
私は笠木さんの姿を見ることができなかったのに、一瞬で見つかってしまった。
諦めて背筋を伸ばす。
「……お父様に、怒られました」