切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
玲司さんの胸に顔を寄せて抱きつけば、彼は優しい顔で私を見下ろす。
「へえ、美月は俺のこと好きなんだ? お兄さんみたいに?」
玲司さんは何言ってるの?
「玲司さんは玲司さん。特別なの」
そう強く主張すると、彼はどこか嬉しそうな声で呟いた。
「……特別か」
「私も玲司さんと同じ年に生まれたかったなあ。一緒に机並べて勉強したかった。今度玲司さんの学生時代の写真見せて」
そんなワガママを言えば、彼はポンポン私の頭を叩いてなだめた。
「いいよ。うちに帰ったら見せてあげる」
うち……。
その言葉に胸が温かくなる。
ああ、私にはちゃんと帰る場所があるん……だ……な。
「……月、美月? 寝てる?」
玲司さんの声がして、ボソッと呟く。
「玲司さん……あったかい」
なんだか眠くなってきた。
まぶたも重くなって来て、目を開けるのも億劫になって……。
覚えているのはそこまで。
その後の記憶が全くない。
優しい闇が私を包み込んだ。
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