期間限定『ウソ恋ごっこ』

「仕返し！」


手に持ったジョウロの水を近藤先輩にぶっかけてやったけど、先輩がとっさに後ろに飛びのいて避けちゃった。ちっ。


「あぁ、もうちょっとだったのに～！」


「ふふん。お前とは反射神経が違うんだよ」


余裕の表情で笑う近藤先輩の横から、伊勢谷先輩が不意打ち攻撃を仕掛けた。


「隙あり！　美空ちゃんの仇(かたき)！」


「うわ!?」


さすがに今度は避けきれず、頭から水を被ってしまった近藤先輩がプルプル頭を振りながら抗議する。


「司！　俺たちの友情はどこに行ったんだよ!?」


「美空ちゃんのためなら一時凍結！」


「ああ、そーかよ！　そっちがそうなら受けて立つ！」


睨み合うふたりに向って、あたしも叫んだ。


「伊勢谷先輩、加勢します！」


「ようし！　一緒に彬を撃退するぞ！」


「二対一かよ！　お前ら卑怯だぞ！」


「卑怯じゃないですよー。いざ、戦闘開始！」


ギャーギャー騒ぎながら辺り一帯をグルグル走り回り、水をかけたり、かけられたり。


完全に子どもの追いかけっこだ。


そのうちにターゲットも目的もどうでもよくなって、三人そろって笑いながら水の掛け合いっこになってしまった。