期間限定『ウソ恋ごっこ』
いつもなら心が癒されるこの空間を見ても、あたしのイラつき度は増すばかり。


こんなところで無駄な時間を食ってる場合じゃないのに。先輩の家で一緒に過ごせる時間は、あと五日しかないんだ。あぁ、一刻も早く近藤先輩の家へ行きたい!


「そんなに早く近藤先輩の家に行きたいの?」


まさに思っていることをズバリと言い当てられて、あたしは目を丸くしながら真央ちゃんを見た。


「あ、いや、べつに、そのぅ」


口ごもっていると、真央ちゃんは『困ったもんだ』って顔で笑ってる。


「……いいよ。行っても」


「え?」


「先に帰れって言ってんの」


「で、でも」


返却されていない本があった場合、顧問の先生から延々と説教をされることになる。


その苦行を真央ちゃんひとりに負わせるなんて……。
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