高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
翌朝、私は会社へと向かっていた。

昨日は全然眠れなかったうえに朝ご飯も食べる気力もなかったから、正直なことを言うと気持ち悪い…。

何より、西口くんと顔をあわせたくない…。

そう思っていたら、
「花沢さん、おはようございます」

聞き覚えのある声に振り返ると、絶対に顔をあわせたくない男ナンバーワンの西口くんがいた。

「おはようございます」

私は会社用の笑顔であいさつを返した。

「花沢さんの後ろ姿が見えたから、思わず声をかけてしまいました」

そう言って笑った西口くんの顔は、まるで主人を見つけて嬉しそうに尻尾を振っている犬のようだった。

「そうですか…」

見えたからって言う理由で声をかけなくていいから!

私は心の中で盛大にツッコミを入れた。
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