高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない

ヒーローに変身スーツが必要なように、コンタクトレンズやメイクやスーツも私に必要不可欠なアイテムだ。

そのどれかが１つでも欠けてしまったら…人前に立つことはおろか、生きて行くこと自体が不可能だろう。

人によっては大げさだって笑うかも知れないけど、私にとっては重要なことなんだよ…。

エントランスで腕時計を見て時間の確認をしながら手帳を見ている私に、
「花沢さん、これから外回りですか？」

そう声をかけてきたのは、部長だった。

「はい、今から１４時に約束をしているところがありますので」

笑顔で愛想よく答えた私に、
「さすが、“営業課の敏腕女神”だな！

今月も絶好調じゃないか！」

部長は嬉しそうに言い返した。

「いえ、とんでもございません」

私は手を横に振りながら答えた。