高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
彼の後ろ姿を見送ると、
「マジですか…」

どっと、それまで感じなかった疲れが急に出てきて私は息を吐いた。

「練習って何をするのよ…」

そんなことをして一体何になると言うのだろうか?

考えても考えても、何にも出てこない。

「もう帰ろう…」

時間も時間だから早く帰ろう、私がやるべきことはそれだ。

カバンを手に持ってオフィスを後にした。

戸締まりを済ませて警備室に鍵を返すと、会社を出た。

西口くんはそこにいなかった。

先に行ってって言ったからそうだよね。

でも、心のどこかで待っていてくれるんじゃないかと少しばかり期待もしていた。

「ま、いっか」

私はそう呟くと、駅に向かって歩き出したのだった。
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