高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
結局西口くんに返事ができないまま、大嫌いな接待当日を迎えた。

場所は和食が美味しく、芸能人や政治家も行きつけにしていると有名な割烹料理店だった。

「いやー、本日は本当にありがとうございます!」

『カサブランカ』の営業担当で、本日の接待の相手である田原さんがテンション高く言った。

…よりにもよって、苦手な人と当たってしまった。

仕事終わりだと言うのに、一体どこにそんな体力があるんだと言う彼のその様子に私は早く帰りたいと心の底から思った。

「こちらこそ、お忙しい中お時間を割いていただき、ありがとうございます」

表の顔をうまく作りながら、私は田原さんに返事をした。

「さ、さ、飲みましょう飲みましょう」

田原さんが早速と言うように、グラスにビールを注いできた。
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