高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
「…失礼します」

彼に頭を下げると、私はこの場から立ち去ろうとした。

「独り言です」

西口くんが言った。

「えっ?」

聞き返した私に、西口くんは背中を向けた。

「俺は今から、独り言を言います。

帰るなら、帰って結構です。

独り言なんで」

何がなんなのか、わからなかった。

と言うか、西口くんは何がしたいの?

そう思っていたら、
「俺につきあっている人はいません」

西口くんが言った。

「えっ…?」

「何か俺が女性と一緒にいるところを見た人がいて、その人が何を勘違いしたのか、俺につきあっている人がいる…なんて、よくわからない噂を立てられて困りました。

でも、あの人は俺の恋人じゃないです。

そもそも彼女には、かつてつきあっていた人がいましから」

西口くんは話をしている。
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