高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
そう思いながら俺も一緒に拾っていたら、
「すみません、すみません、すみません、本当にすみませんでした」

当人は何度も謝って、逃げるように俺の前から立ち去った。

「あっ、ちょっと、忘れ物!

ねえ、忘れ物!」

何をそんなに慌てているんだろう…?

まだ落としたものがあるのに、何も気づかないなんて…。

俺は手の中にあるポイントカードに視線を向けた。

とりあえず、店員に預けることにしよう。

もしかしたら本人が気づいて取りに戻ってくるかも知れない。

そう思って名前を見たら、
「花沢蜜実…?」

そう名前が書いてあった。

俺の頭の中に浮かんだ人物は、彼女だけだ。

でも、それは会社での彼女の姿だ。

さっきの彼女は眼鏡に適当にくくっただけの髪にパーカー姿のイメージとは似ても似つかない人物だった。
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