見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
二日後、私はついに初出勤の日を迎えた。今日は周さんも旧一柳邸でお客様をおもてなしするそうなので、一緒に向かう。
そわそわしつつ一階のパウダールームの鏡と向き合い、ボブの髪をねじってピンで留めていく。
簡単なアップスタイルにしてリビングに戻ると、スーツに身を包んだ周さんが待っていた。
「準備はできたか」
「はい。髪、変じゃないですかね?」
くるりと後ろを向いてヘアスタイルを見せてみる。彼はざっと確認して頷き、「悪くない」といつものひとことを口にしてさっさと玄関へと向かっていった。
……普通だ。いたって普通。一昨日の夜のことなんて、まるでなかったかのよう。
私は今でも、思い出すと身体が火照ってくるのに。
周さんのキスはとても優しく、甘美で、全身がアイスみたいに溶けて崩れ落ちそうだった。腰が砕けるって、ああいう感覚なんだろうか。
彼が片腕で抱いて支えてくれていたが、それでも立っていられなくなりそうで。そんな私を見兼ねて、彼は吐息混じりに囁いた。
『ベッドに行こう』……と。