見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
もしや、一線を越える展開になるのでは!?と、一瞬でも考えてしまった自分が恨めしい。

実際は、再びお姫様抱っこでベッドに運ばれたものの、それからはキスすらされず何事もなく一夜が過ぎていった。

そうして翌日は元通りだ。ちょっとは関係が進展するかも、と期待したのに……。そう簡単にうまくはいかないか。

とにかく、今は色恋に呆けている場合ではない。今日は初出勤というだけでなく、かなり大事なお客様をお招きするらしいのだから。

旧一柳邸までの道のりを周さんと並んで歩きながら、その客人について聞いてみる。


「今日いらっしゃる方、結構大物さんなんですよね?」

「ああ。イギリスの閣僚の息子が、婚約者とお忍びでやってくる。大の日本好きで、大正時代の文化に触れたいそうだ」

「閣僚の息子さん……!」


ということは、いずれ政務官とか大臣になったりするんだろうか。外国の政界人にお会いする機会なんて滅多にないから、かなり貴重な経験だ。

私は、その彼に煎茶道のお点前を披露することになっている。お点前自体は慣れているからいいのだが、大物を相手にしたことはないので緊張がハンパじゃない。
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