見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
彼は私の右手に乗る小箱から指輪をつまみ上げ、今度は私の左手を取る。


「もう変なやっかみを受けないように、皆に見せつけておけばいい。君と俺は蜜な関係で、誰も干渉することはできないんだと」


薬指に細いリングを通され、小さく胸が鳴った。どうやら周さんは、先ほどの橘さんとの一件で、私の悩みの種をある程度察したらしい。

確かに、私と周さんが親密にしているところを見せつければ、不釣り合いだという印象も薄れていくのかも……。

と、そこまで考えてはっとする。見せつけるってことは、今この状況を誰かが見ているってことでは!?

慌ててバッと周りを見回せば、中庭に面した食堂の窓から、熟女三人組がこちらを凝視していた。私と目が合った彼女たちは、そそくさと散っていく。

うわぁ、本当に目撃されていた……。

私は口の端を引きつらせ、三人に気づいていた周さんは、横目で鋭く冷淡な視線を送る。


「彼女たちもなかなか度胸があるな。今回は不問に付すとしても、以後俺の婚約者を困らせたら制裁を与えると周知させておく必要がありそうだ」


口調は淡々としているものの、暗黒のオーラが漂いまくっている。

今後の彼女たちの行いによっては、具体的にどう対処するのかは謎だがとりあえず恐ろしいことが起こりそうで、私は「あの、どうか穏便に……」と宥めた。
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