見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
私をけなしまくってくる弟がいじらしいことを言っているらしいので、不覚にもキュンとした。

やっぱり、なんだかんだ言って慕ってくれているんだな。今度は陸に直接電話してみよう。

笑い合ってしばし話をしたあと、あったかい気持ちで「じゃあ、またね。おやすみ」と告げる。

ちょうどそのとき、寝る支度を整えた周さんが部屋に入ってきた。通話を終了させる私に歩み寄りながら問いかける。


「泰永家の皆は変わりないか?」

「はい。トレヴァーさんの話をしたらすごく喜んでました」

「そうか」


いつもの無表情で頷いた彼は、自然な仕草で私の肩を抱く。

これは、つい先日から始まった〝寝るぞ〟の合図だ。暗黙の了解で、私は腰を上げてベッドに移動する。

そうして布団の中に潜り込むと、周さんは私の身体に片腕を回して抱き寄せる。これまで私たちの間に開いていた微妙な距離は、すっかりなくなった。

こうなったのは、婚約指輪を渡されたあの日からだ。

あのとき、『抱きしめて、口づけたくなった』と漏らした周さんは、由緒正しい場所では相応しくないとそれを自重して。

帰ってから甘く戯れることを匂わせたものの、特になにをするでもなく、普段と変わりないまま夜を迎えた。
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