見習い夫婦~エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます~
あの発言はただの気まぐれか……と、軽く残念な気持ちでベッドに入った直後だ。身体を横たえたところを背中から抱きしめられたのは。


『待ちくたびれたか?』


少々意地悪っぽさのある声でそう囁かれて、ああ、これは故意に焦らされていたんだなと気づいた。

さらに彼は、緊張する私を抱きしめたまま、いつの間にか眠っていたのだ。この人は本当にSだと思う。

しかしそれ以降、眠るときはこうやって抱き寄せられるのがお決まりとなっている。

物理的な距離も近くなれて嬉しい。それに浴衣だと生地が薄いから、彼の手の感覚やぬくもりがしっかり伝わってきて、ひたすらドキドキしている。

それをごまかすためにも、私は彼と向かい合い、毎夜とりとめのない話をするのだ。


「私の名前、新芽の茎だけを集めた茎茶(くきちゃ)っていう緑茶の一種から取ったらしいんです。くきちゃ、きちゃ、きさ、みたいな」

「結構無理やりだな……」


周さんの冷静なツッコミにクスクスと笑い、さらに兄弟の名前の由来も説明する。
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