卑劣恋愛
微笑む
それからあたしは智樹と連絡を取り合い、口裏合わせを行った。


2人で駆け落ちをするため家出をしたこと。


怪我の原因が山の中に入り、崖から転落したから。


そういうことにしておいた。


実際に警察が来て嘘の報告をしてみても、全く心は痛まなかった。


むしろ大人を安心させるための嘘をついている自分が誇らしいくらいだった。


本当は同級生に監禁されて、硫酸をかけられたなんて言ったら、きっと警察も卒倒してしまうだろう。


そう考えるとちょっとだけ可笑しかった。


「無事に警察の人は帰ってくれたよ」


あたしはクローゼットの中の武へ向けてそう言った。


あたしがリビングで警察の人と話をしている間、武は必死で物音を立てていたみたいだ。


毛布の乱れ具合を見ると一目瞭然だった。

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