あの日、君と誓った約束は
思春期の男の子のフラストレーションや葛藤にはとても共感できた。中学生になって、約束の星空を見せるためにふたりは丘を登る。汗だくになりながらも男の子がおばあちゃんの車椅子を押していくラストシーンは、目に浮かぶようだ。目が不自由になってきていたおばあちゃんが、その事実を隠して星空に感動している場面も、涙が滲む。きっとおばあちゃんは、男の子の気持ちにこそ感動したのだろう。

この前聴いたばかりだというのに、私はその十五分弱の世界に陶酔していた。聴き終えたところで、満足感から大きなため息をつく。

「……うん」

私は閉じていた目を開け、すぐさま引き出しから方眼紙と色鉛筆を取り出した。ラスクさんの世界を私の絵で表現するため、すごいスピードで下書きをし、色をつけていく。丘に吹く風も、満天の星も、男の子とおばあちゃんが夜空を眺める姿も、私が感じた情景をそのまま形にしたい。そんな情熱に動かされて、一心不乱に絵を描いていく。

こんなふうになることはたまにあった。物語の情景が鮮やかに目に浮かんだとき、 その想像した景色に心が動かされるような作品に出会ったときだ。ラスクさんのつく る話は、今までも全部、こうやって絵に起こした。前作までは録音できなかったから、その日のうちに夜更かしして描いた。

物語に浸っているとき、絵を描いているとき、私は私らしくいられる気がした。川北くんのことや破られた絵本のことを考えると胸が落ち着かなくなるけれど、絵を描き終えたら、きっと大したことじゃないって思えているはずだ。




 
 
< 29 / 29 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:11

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

55日後、きみへの告白予定日

総文字数/10,115

恋愛(学園)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
※PHP研究所より、単行本が出版されました。 こちらでは第2章までお読みいただけます。
いつかのラブレターを、きみにもう一度
[原題]もう一度、手紙のきみと

総文字数/52,163

恋愛(学園)128ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
”書くだけラブレター”は、出さないことが大前提だったんだ。 ***** スターツ出版文庫より発売中。 こちらでは、途中までの公開です。
ウソツキチョコレート

総文字数/82,193

恋愛(純愛)233ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
※スターツ出版文庫より書籍発売されました! ***** 触れられないことが悲しい。 触れてもらえないことが悲しい。 触れたい。 さわってもらいたい。 こんな気持ちになるなんて、今まで思ってもみなかった。 こんなに口に出さずにいられなくなるなんて、想像もつかなかった。 『気持ち悪い』 その言葉のトゲが、胸に刺さったまま、どうしても取れなかったから。 種田美亜(たねだみあ)、高校一年生。 私は、男の人にさわることができません。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop