とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
隣に並んでこようと距離を詰められたので、ちょっと横に逃げてしまった。

「怯えていないけど、怖くなくなったわけじゃないです」

「そう? 以前は体を震わせたり視線も絶対に合わなかった。嫌われているって言うより、視界にも入れたくないって言うか、男に人権なんてありませんよっていう、空気扱い?」

ちょっと気になってたから、意外と応えたんだよね、と笑った。

確かに、チャラそうだし、実際に女性との関係が派手だって言っていた。

ヘアサロンのSNSには、辻さんがUPされると女性のコメントで溢れるし、その中の女性を食べちゃうとかなんとか。

そのせいで警戒もしていた。舐め回す視線も怖かったのは事実だ。

「なんで変わったの。さっきの男?」

しっかり見られていたのも気まずい。店の方へ歩いていくも行先も全く同じなのも気まずい。

「まあ、あんな柔らかい表情の華怜ちゃん初めてみたから、一瞬でわかったけどね」
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