とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 女性と遊んでいると評判で、美容師なのでコミュ力の高い彼には、私みたいな人間は嘘を付けそうにない。

「さっきの人が、例の親が決めた結婚相手です」

「そうだろうね。で、君の男性恐怖症を取り払ってくれた人と」

 それは語弊があるけれど、そこまで他人に突っ込んだ話をして引かれないかもわからない。

「……彼のせいで男性恐怖症になって、彼のおかげで克服したって、10年以上男子と話すのが怖かったのが嘘みたいに思えちゃうじゃないですか」

「え、原因の相手と結婚しないといけないの? こっわ」

 色々と原因があったし意地になった部分もある。

でも、客観的に見てもやはりおかしいよね。何をやってるんだ、私は。

感情的に行動して、傍から見たら馬鹿な女に見えるだろう。

「長くのばしていた髪は、彼のためだったんです。彼が褒めてくれたから。でもハサミで切られた。理由も聞かずに私は逃げて、髪を伸ばすのも男性と話すのも怖くなって、こんな歳まで、男性に酷い態度をとってきました」
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