とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 今更、過去を振り返らない。だって今が楽しいから。

 今更、誰にも会いたくない。許す、許さないが問題じゃなくて、楽しい今、私には一ミリも興味が持てないから。

 だから美里と美里の旦那さんが、自分の結婚式だからとはっちゃけてるのだとしたら、勘弁してくれと走って逃げるしかない。

 現状維持。それで満足。泣いてまで謝ってくれた美里には本当に申し訳ないんだけど。

 とっくに色んな感情に蓋を閉めてしまってるんだ。

「わかった。ごめんね、華怜」

「謝らない謝らない。で、ネイルはどうする?」

「お店に相談に行くよ。うんと奮発してお洒落なの作ってもらうね」

 ようやく笑ってくれた美里に、温かいシチューを出した。

 いつの間にか雨は止み、雷はどうやらならずに済んだ。

 けれどそれは嵐の前の静けさ。

色んな感情に蓋をしない、蓋をしないで済むような生き方をしてきた男との再会が待ってしまっている。

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