とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 先輩のネイリストの美香さんは、両手で数万かけたネイルを手入れしながら、コンビニのサンドイッチを休憩室のテーブルに並べた。

 私のお弁当を見て、驚いている。

「美香さんは家事、どうしてるんですか?」

「私は実家だもん。何もしないよ。毎月、ネイルでお金やばいしね。華怜は実家遠いの?」

「えっとまあ」

 卵焼きを食べつつ、曖昧に笑う。

 親は昔から私に甘く、何かあればヒステリックな行動をしがちだ。

 なので私の情報が入らないぐらいの距離をとらなければいけない。

「華怜も結婚願望ないなら実家で貯金すればいいのに。楽よ」

「一人の方が落ち着くんです」

「へえ。まあ誰にも文句言われないのは楽か」

 美香さんはうんうん頷いた後、長い爪で丁寧にサンドイッチの包装をとっていく。

 口調はズバズバ言うのできつく見られがちだけど、否定しないしお客の悪口も言わないので美香さんは話しやすかった。

「でもさあ、華怜って雷駄目で――」

 チリンチリンと入り口のドアが鳴った。

 この時間は休憩中なので鍵をかけているはずが、どうやら看板もそのままでドアは開いていたらしい。

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