とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 抱きしめられて、私も微笑む。

「うん。いいよ。私も知らない」

 背中を抱きしめると、うっすら汗ばんでしっとり濡れてきていた。

「華怜の言葉一つで俺は転がされる。こんなに赦されて満ち足りた気持ちになるとは知らなかった」

「うん。ごめ――っ」

謝ろうとして唇を塞がれた。

謝るなと言わんばかりの深い口づけに、舌の動きに集中したくて目を閉じた。

言ってよかった。つたえてよかった。伝わってよかった。

遅くなってごめん、遠回りしてごめんね。

また一矢くんに触れてほしいから、髪を伸ばすよ。

大好きな貴方に触れてほしいから。貴方が喜ぶ顔が見たいから。
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