とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「えー、指輪の次はなに?」

高いものは駄目よって言うと、珈琲を飲んでいた一矢くんの口がにたりと歪んだ。

これは間違いなく悪い顔をしている。

「なに?」

「キングサイズのベット。大きいのってなるとやっぱ輸入家具の方が探しやすいし」

さすが医療コンサルティング社長。インテリアに関しても色々詳しい。

というか、一緒に寝る気満々なのがちょっと可愛い。

「今の一矢くんのベットも広いじゃない。あと部屋が全部素敵だったよ」

「ああ、寝室は家具全部アルマーニなんだよ。アルマーニホテルのスイートルームに確かキングサイズのベットが――」

「ちょっとまって。いい。良いってば」

具体的なブランド名が出て焦ってしまった。間違いなく高級で高額に違いない。

「私は今のままでいい。贅沢したくない」

「ずっと一緒に暮らすんだから快適な家具の方がいいと思うけどなー」

でも急ぐ必要はないか、って一矢くんが一歩引いてくれたのでこの話は終わった。

しかしこれからもお金に関しては、目を光らせていこう。

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