とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 古賀さんが熱い視線を向けるもなんのその。

 下を向いて目を閉じたまま、起きる気配もない。

 しかし、家が豪邸で社長の息子である彼が、パトロンを望むとも思わないので笑ってごまかした。

「できましたよ。もし新しいネイルにする場合は、白鳥さん、再来週の火曜と木曜の20時なら時間とれそうです」

「あら、そう。どっちもデートだわ。たまには若い子に頼もうかな。貴方はいつ時間がある?」

「私でしたら月曜以外、午前中は時間に余裕があります」

「決まりね。金曜にお願いする。時間は貴方の都合に任せるわ」

 トントン拍子で予約も決まり、白鳥さんが戻ってくると同時に古賀さんが出て行こうとしていた。

「華怜さん、戸締りしててもらっていい? 私、古賀を店まで送っていくわ」

「……はーい」

 戻ってきた白鳥さんには、待合室に座っている彼は見えなかったようだ。

「あのう、店を閉めますので、出てください」

「……」

 カウンターからけっこう大声を出したのに、気づいていない。

 近づきたくないなって思い、レジに飾っていたユニコーンのぬいぐるみを、彼の頭に投げた。

< 25 / 205 >

この作品をシェア

pagetop