キミの嘘




わたしが五歳のとき
お父さんがいきなりわたしの前からいなくなった。
本当に突然でなにがなんだかわからなかった。


幼いわたしにお母さんは

お父さんは仕事で事故に巻き込まれたのだと話ししてくれた。

そのあと、私がもうすこし理解ができるようになったころ、
火災が起きて、大規模な被害で、建物も全焼してしまい、お父さんの影形はなかった、遺骨ないままお葬式は行われたとお母さんが話してくれた。

お葬式の日
今にも泣きそうなくらいグレーの空だったことを覚えている・
お母さんは唇をかたく閉じたまま私の手を握っていた。


お父さんがいなくなって、しばらくはお母さんと二人きりで生活して、わたしが小学校に入学しようという年の四月。

お母さんは縁のお父さんと再婚した。

お母さんが一人で寂しくしていたのもわかっているし、苦労しているのもわかっていたから、お母さんが幸せになるなら、と祝福した。

それに、縁のお父さんがお母さんを支えていたことも幼いながらに私も感じていた。
お母さんは気丈にガンバっていたけど
時々見せる顔がつらくて・・・無理しているんだなって思っていた。
このままじゃ・お母さんの気持ちがぽっきり折れてしまいそうに思えた。

あのとき、
縁のお父さんがいなかったら、お母さんはお父さんの後を追っていたかもしれない。
縁のお父さんがお母さんの心を支えてくれたいた。


縁のお母さんも、事故で亡くなったと聞いている。
お母さんと出会った時はすでに、縁は父子家庭だった。

縁と縁のお父さんと初めてあったのはお母さんが再婚すると決めてからだった。
食事会で縁と会って、年齢も近くて最初から仲良くしていた。


一人っ子だったからお兄ちゃんができたみたいで嬉しかった。
どこに行くのも一緒で
ずっとお兄ちゃん、お兄ちゃんって、くっついていた。

縁は、どこでもくっついてくるわたしを、邪魔にすることなく、いつもそばにいさせてくれた。

まるで、ずっと兄妹だったかのように自然に家族になっていた。
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