極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
チークを落とされたというのに、実乃里の頬が赤く染まっている。

龍司の心に少しだけ入り込めた気がしているのだが、そこに恋愛に繋がるものがあるのかと考えれば、ない気もする。

喜んでいいのかどうかわからず、首を傾げて考え込めば、龍司に背中をトンと押された。


「着替えてこい。実乃里の家までタクシーで送ってやる」

「は、はい……え?」


龍司の顔を仰ぎ見たのは、初めて名前で呼ばれたからである。

突然のことなので聞き間違えではないかと目を瞬かせれば、彼の眉間に皺が寄って「実乃里、早くしろ」と急かされた。


「はい!」


スキップを踏みたい気分で実乃里はフロアを駆け出し、更衣室へ向かう。

名前で呼ばれると、距離が縮まった気がする。

スナックでアルバイトをしたことは無駄ではなかったと、喜んでいた。

< 124 / 213 >

この作品をシェア

pagetop