極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
小春アナは、確か、実乃里と同じ歳であったように思う。

美人というより可愛らしい印象で、庶民的で親しみやすい。

新婚の旦那も同局のアナウンサーで、朝の情報番組の司会を務める、実力派の爽やかイケメンだ。

新婚ネタでいじられ、照れている小春アナを見つめ、実乃里は心の中でため息をつく。


(仕事も恋愛もうまくいった成功者なんだね。いいなぁ……)


同じ年齢だと思えば、自分と比較してしまう。

キラキラと輝く小春アナに憧れて、その成功を羨んだ。


(恋愛はもう諦めたけど、この店だけは守りたい。私の夢はまだ叶う途中。経営を軌道に乗せて、たくさんのお客様の美味しいの声が聞きたい……)


cafe実りでの撮影は三十分ほどで終了し、ロケ隊は次の店へ移動を始めた。

出演者は先に出ていき、スタッフから謝礼として番組特製プリペイドカードをもらった。

静けさが戻った店内で、実乃里がテーブルを片付けようとしていると、小春アナがひとりで戻ってきた。


「お忘れ物ですか?」


テーブルや椅子を見回した実乃里に、彼女は「違うんです」と笑顔で話しだす。

「このお店の営業時間と定休日を教えてください。人気一位のスモークサーモンとアボガドのラップサンドがとても美味しかったから、今度プライベートでも来たいと思います」

「あ……ありがとうございます!」


なんと嬉しいことを言ってくれるのだろう。

テレビで活躍している有名人が、自分の店のリピーターになってくれる……そのことに実乃里は驚いてから、心底感謝した。

営業時間と定休日をプリントした名刺サイズの紙を渡し、SNSでメニューなどの情報発信していることも張り切って伝えた。


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