極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
「わかりました、チェックしてみますね。それでは失礼します。今日は取材のご協力、ありがとうございました」


桜が咲いたように微笑んだ小春アナは、ワンピースの裾を翻して出ていった。

庶民的と言われる彼女だが、実際に会うと、一般人よりは遥かに花がある。

先ほど感じた成功者への羨みは消え、今は実乃里の胸に自信が膨らんでいる。

テーブルを拭く彼女の瞳には、力強い光が輝いていた。


単純かもしれないが、小春アナがまた来たいと言ってくれたことで手応えを感じていた。

今日のロケの収録が放送されるのは、再来週なのだそう。

きっとその後は、大勢の客で賑わうはずだと、実乃里は期待を大きく膨らませていた。


テレビの取材を受けた日からひと月半ほどが過ぎ、十二月の半ばになる。


「いらっしゃいませ。ただ今お席がございません。お持ち帰りでもよろしいでしょうか?」


クリスマスソングが控えめに流れるcafe実りの店内は満席だ。

席のない客のほとんどはサンドイッチやドリンクをテイクアウトで買い、仕方ないと言いたげな顔で、日が落ちた寒空の下に出ていった。

時刻は十七時半。

客層はOLや学生、幼児連れの主婦に高齢夫婦とバラエティーに富んでいる。

閑散としていた店がはやりだしたのは、もちろんあの取材が放送された後からで、テレビの影響力は実乃里の想像以上であった。


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