一生に一度の「好き」を、全部きみに。

ライブが二日後に迫った木曜日の午後。

最後の授業が体育だったので、私は体操服で見学していた。

ザーザーという雨の音がうるさい。湿気がすごくてジメジメしてるし、それだけでドッと疲れたような気分。早くやまないかなぁ。

「鳳! パス!」

ボールが咲に回ってドリブルしながら駆けていく。

振動がこっちにまで伝わってきた。

「シュートいけっ!」

その瞬間咲は大きくジャンプして見事なダンクシュートを決めた。

「きゃああああ!」

「カッコいい〜!」

体育は二クラス合同なのでやたらと人数が多いけれど、どこにいたって咲の姿はすぐに見つけられる。

こんなにバスケがうまいなんて知らなかった。

みんなの輪の中にいるときの咲は手が届かない存在で、いつだってキラキラ輝いてる。私だけ置いていかれているみたいで、なんだか咲がどんどん遠くなっていく。

「う、いった……」

大きな動悸のあとに突然襲った胸の痛み。

今週に入ってから体調は最悪。じっとしてても動悸がして、唇や爪先が紫色になっている。血が巡っていない証拠。息苦しくて、目がかすむ。

< 240 / 287 >

この作品をシェア

pagetop