一生に一度の「好き」を、全部きみに。
ライブが二日後に迫った木曜日の午後。
最後の授業が体育だったので、私は体操服で見学していた。
ザーザーという雨の音がうるさい。湿気がすごくてジメジメしてるし、それだけでドッと疲れたような気分。早くやまないかなぁ。
「鳳! パス!」
ボールが咲に回ってドリブルしながら駆けていく。
振動がこっちにまで伝わってきた。
「シュートいけっ!」
その瞬間咲は大きくジャンプして見事なダンクシュートを決めた。
「きゃああああ!」
「カッコいい〜!」
体育は二クラス合同なのでやたらと人数が多いけれど、どこにいたって咲の姿はすぐに見つけられる。
こんなにバスケがうまいなんて知らなかった。
みんなの輪の中にいるときの咲は手が届かない存在で、いつだってキラキラ輝いてる。私だけ置いていかれているみたいで、なんだか咲がどんどん遠くなっていく。
「う、いった……」
大きな動悸のあとに突然襲った胸の痛み。
今週に入ってから体調は最悪。じっとしてても動悸がして、唇や爪先が紫色になっている。血が巡っていない証拠。息苦しくて、目がかすむ。