一生に一度の「好き」を、全部きみに。

忘れるわけない。忘れられるわけないじゃん。

今でもこんなに、咲の歌声に心が震える。きみを想うと、こんなにも胸が締めつけられて苦しいのに。

四年間、隠して消そうとした気持ちが一気に爆発した。ブワッと涙があふれて、涙の粒が頬へと流れる。

「ふっ、うっ……」

好きだよ。

一度傷つけてしまった手前、どうすればいいかわからない。

その日は久しぶりになかなか寝つけなかった。

メッセージの返信ができないまま、気づけば移植手術の日が一週間後に迫っていた。

あれから一度も咲からのメッセージはない。なければないで、ホッとした。これ以上かき乱さないでほしい。

穏やかに手術に臨みたいんだ。

それなのに……。

メッセージがくることを期待してる私がどこかにいる。未練がましいったらないよね。

いつまで経っても忘れられない。

忘れようとすればするほど、どんどん忘れられなくなっていく。

今でも胸の大半を咲が埋め尽くしているなんて。

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