一生に一度の「好き」を、全部きみに。
いよいよ手術が明日に迫った日の夜。
お父さんがお見舞いに現れた。
「黙っていようと思ったんだけど」
そんなふうに切り出して、言葉をためるお父さん。
「なに?」
「日本の先生から連絡があって、毎日のように鳳くんが病院をたずねてくるそうなんだ」
「え……?」
「葵のことを気にしているらしい」
「ウソ……」
「葵のことを本気で大切に思ってるんだろうな」
「…………」
やめてよ。
また心がかき乱される。
「お、父さん……わた、し、いいのかな?」
「葵がしたいようにするといい。鳳くんも、それを望んでるんじゃないか?」
詳しく説明しなくても、お父さんは私の言いたいことを察して返事をしてくれた。
同じ経験をしたからこそ、私にそう言うんだろう。あくまでも咲の味方というわけだ。
「ゆっくり考えなさい。だけど今は明日に備えて休むんだ。いいな?」
「うん……」
胸にくすぶる咲への想いを我慢できない。
だけどわざわざ不安にさせるようなこともないかな。
もし、手術が終わって無事だったら──。
迷わず気持ちを伝えよう。
そう心に誓って、私はそっと目を閉じた。