溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
◇◇◇
大小様々な七冊の絵本が入った袋を抱えた博人と、マンションまでの道のりを歩く。
「いろいろとありがとうございました」
書店員にいきなり声をかけたときには驚かされたが、サインだけじゃなくコーナーまで作ってもらえるようになるとは夢のようだ。
博人の行動力といったらない。
思い立ったらすぐに動くバイタリティに触発され、早く新作を書きたい気持ちになった。
「サイン会みたいなものは?」
「サイン会なんてとんでもない! 人気のある作家さんだけだと思います」
そもそも絵本作家では、あまり聞いたことはないけれど。
「書店巡りは?」
「それもした経験ないです」
いつも静かに発売日を待つだけ。こっそりひとりで書店を覗くのが関の山だ。
「でも今日は、今でも大切にしてるって聞いて、ものすごくうれしかったです」