溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜
「私の力だけでできたわけではないんですよ。この前ご一緒にいらした方が、販促ツールを作ってくださったんです」
「えっ……彼がこれを……?」
「はい。あの翌日の夜、閉店間際にお持ちになって。『これを使ってコーナーを作ってほしい』と」
予期せぬ話を聞き、美華は放心状態だった。
(博人さん、そんなことひと言も言ってなかったのに……)
サプライズに胸がじんわりと熱くなる。
「いい旦那様ですね」
「えっ?」
あの夜、夫婦だとは言っていない。
「『僕の妻なんです』って、とっても誇らしげでしたよ」
男性店員はニコニコと笑った。
博人の粋な計らいを前にして、美華は心の中でなにかが大きく変化するのを感じていた。