溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

涙目で言われれば、つれなく非情に断れない。仕方なく気合十分のような見た目にされたのである。


「ラウンジ、通り過ぎた?」


足を止めて振り返ったときだった。


「いたいた。どこにいるのかと思ったよ」


スーツ姿の男性と肩先がぶつかり、なぜか腕を掴まれた。


「ま、いいや。ラウンジは混雑してるから、こっちにしよう」


美華をぐいぐい引っ張り、男性が歩きだす。


「えっ、あの……」


驚いて見た男の横顔が、とても高い位置にある。
美華も一六〇センチと身長は低いほうではないが、この男性の背の高いこと。一八〇センチは優にあるだろう。

しかも、その横顔の美しさといったらない。以前雑誌で読んだが、いわゆる黄金比というのか。鼻筋から口もとへの曲線が理想的なラインを描いている。
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