溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

美華に声をかけてきたのだから、この男性がお相手なのだろう。上司である正隆から美華の写真を見せられ、顔で認識したのかもしれない。

美華も社員旅行で撮った集合写真を見せてもらったが、なにしろ遠目。はっきりと確認できなかった。
いや、というよりは興味があまりなく、しっかり見なかったと言ったほうが正しい。

男性は待ち合わせたロビーラウンジではなく、美華を『光風堂』という立て看板のあるカフェへ誘った。
入ってすぐ左手にショーケースがあり、そこに色とりどりの和菓子が並んでいる。

あまりのかわいさに、美華はつい男性の手を振りほどいてケースに張りついた。
和でも洋でも、スイーツにはとことん目がないのだ。

繊細な色をしたひと口サイズの和菓子は、どれも美しくかわいらしい。芸術品と呼ぶにふさわしいものだった。

それでも口をつくのは……。


「わぁ、おいしそう」


美的センスよりも、味の想像になる。


「どれでも好きなものを食べたらいい。とにかく座ろう」
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