溺愛婚姻譚〜交際ゼロ日ですが、一途な御曹司と結婚します〜

つまらないと言われるよりはいいと思う自分も、博人に負けず劣らず楽観的な性質かもしれない。


「それで?」
「なんでしょうか」
「俺との結婚。する気になったか」


今日半日、博人と一緒にいて感じたのは、意外と心地いいという予想外のものだった。
いきなりのプロポーズには驚かされたが、彼の言うインスピレーションを信じて、勢いよく流れる川に身を任せてもいいかもしれない。

今日一番の真剣な眼差しで、博人が真っすぐに美華を見つめる。


「前向きに考えます」
「つまりオッケーってことだ」
「万事オッケーでは――」


〝ないです〟という助動詞は、博人の唇が触れたことでかき消された。
そよ風が通り過ぎたかのような微かな感触に驚いて身体が硬直する。


「い、今な、なにを……!」


唇をわななかせる美華に博人は不敵な笑みを浮かべる。悪びれた様子は微塵もない。

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