冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
このままだと本格的に眠ってしまいそうだと不安になった彩実は、コーヒーでも飲みに行こうと立ち上がり、エレベーターに向かった。

上階のレストランフロアに行けば、おいしいコーヒーが飲めるだろうと思いながら歩いていると、一番奥のエレベーターの扉が開くのが見えた。

すでに大勢のひとが扉の前で待っていて、彩実はそれに乗るのはあきらめることにした。

すぐに別の扉が開くだろうとぼんやりと待っていると、一番奥のエレベーターから見慣れた顔が出てくるのが見え、彩実は目を丸くした。

「諒太さん……それに三橋さん」

乗り込む客の間を抜けながらロビーに向かうのは、諒太と三橋だ。

眠気も一気に消え、彩実は立ち尽くしたままふたりの姿を追った

ふたりはにこやかに言葉をかわしながらロビーに向かって歩いている。

隣を歩く諒太をうれしそうに見つめている三橋は私服姿で、白いセーターとベージュのフレアスカートが良く似合っている。

腕には黒のコートをかけ、ロングブーツ姿で颯爽と歩いている。

隣を歩く諒太を見れば、遠目からでも上等だとわかるスーツを着ていた。

ダークグレーのスーツに紺のネクタイは、きりりとした雰囲気の諒太によく似合っていて、諒太を見て振り返る客も多い。

今も諒太の格好いい姿に足を止め、頬を染めて見つめる女性が何人もいる。

たしかに、二度見してしまいそうなほど素敵だ。

細身のダークグレーのスーツも紺のネクタイも、昨日諒太が披露宴で着ていたタキシードに負けないくらい彼の魅力をひきたてている。

けれど、昨日マンションを出て行ったときに諒太が着ていたのは紺色のスーツでネクタイは深紅だった。

如月ハウスと白石ホテルのイメージカラーが印象的で、彩実の記憶にはっきりと残っているのだ。

「昨夜、三橋さんと一緒だった……?」

諒太たちが並んでいる姿にショックを受けた彩実は、目の前のエレベーターの扉が開いたのにも気づかず、ロビーに向かって歩く諒太の横顔を見つめていた。

手をつないだりしているわけではないが、三橋が諒太を見上げて話す様子はとても親密で、ふたりの間になにもないとは思えない。

やはり、昨夜から今までふたりは一緒にいたのだろうと、彩実は胸の痛みをこらえるように唇をひきむすんだ。

「あの、そこに立たれると邪魔なんですけど」

< 122 / 157 >

この作品をシェア

pagetop