同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
体温計は、三十七度五分のデジタル表示が出ていた。
道理で頭痛もする筈だ。

畑山先生の問いに頷いて答えた。
今日の卒業式は母が来てくれている。
帰りは母と一緒の予定だった。

「多分教室にお母さんがいらっしゃるから、荷物はお母さんにお願いして、お迎えが来るまでここで休んでなさいね」

畑山先生はそう言って机の上に置いてある電話で教室に内線番号を押して、山田先生に経緯を説明している。

私は再び布団の中で横たわり、右手に挟まれていたメモに目を通した。

『体育館裏の手前から三本目の支柱』

謎のメモに頭を悩ませるも、熱で朦朧とした今の私には何の事やらさっぱり分からない。

畑山先生が内線で教室に連絡を入れて十分も経たないうちに、母が保健室にやって来た。

まだ他のみんなはクラスで最後の学活中だ。

「まだこの時間なら午前中の診察時間に間に合うから、このまま病院に連れて行きます」

母が畑山先生と話をしているのが聞こえたので、私もベッドから身体を起こし、身支度を整えた。

そして先生に挨拶を済ませると、そのまま学校を後にした。

さよならなんて告げなくていい。
このまま黙ってここから私は消えてしまえばいい。

幸いにも進学する私立高校は、ここからは私だけが進学する。

みんなから、忘れられたらいい。

こうして私は中学時代の友人と決別した。

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