同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
パステルピンクの可愛いこれを、わざわざ用意してくれたのは、プライベートでこれを履く人がいるからだろうな。

そう思うと、何故か胸が苦しくなった。

そんな自分の気持ちを見て見ぬ振りをしながら教室の引き戸を閉めて、坂本の後を追って特別教棟へと向かった。

特別教棟には専門教科の教室が集結しており、音楽室、美術室、理科室、家庭科室、技術室、パソコン室、視聴覚室、図書室がある。

坂本が一体どれだけのメモを各教室に仕込んでいるかわからないけど、まさか本館と特別教棟を行ったり来たりとかはないだろうか。

大概この様な勘は当たるもので、音楽室のグランドピアノの上にあったメモにはこう書かれていた。

『二年三組、教卓の上』

メモを見た途端にガックリと肩を落とす私を、声を殺して笑う坂本。
そんな彼を睨みつけながら、メモ紙を回収して再び本館へと戻る私の後ろで、坂本は音楽室のドアの施錠をする。

特別教棟の各教室は、それぞれ担当の先生が私物を置いている事もありもしもの事があった時に大変だからと言うけれど、それならば特別教棟にはメモを置かなければいいのにと思ったけど、卒業するとなかなか足を踏み入れる機会もない。
ある意味坂本の優しさなのだろう。

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