同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
せっかく自分の中に芽生えた恋心も、こんな些細なネガティブな考えで一気に萎んで行きそうになる。
これだから恋愛初心者は困る。
よくよく考えたら、この年齢(とし)まで恋愛に全く関心もなく、初恋らしき思い出すらない。
これが初恋だと言ってもおかしくない。

……まさか二十五にもなって初恋を自覚するなんて思いもしなかった。

お互いがまだ固まったままに階段で抱き合っているこの状態、私がバランスを崩して坂本に支えられている。
私が離れないと坂本は動けない。

離れなきゃと言う思いに反して離れたくない思い。
何故今日に限って、二人きりなのだろう。
こんな状況だから、私はいつもと違ってこんなに大胆なの?

でもこんな事を考えていたら、ますます恥ずかしくなり、早く坂本の腕の中から身体を離れたくなった。
まだ赤面した私の顔色はそのままだろう。
でも、坂本の優しさに甘えて勘違いしてはいけない。

そっと腕に力を入れて、坂本の腕の中から身体を離そうとする私に反して、何故か坂本は私を支える腕に力を込めて来る。

「もう大丈夫だから、腕、離して?」

私の声が、緊張で震えている。
坂本もそれに気付いたのか腕の力を抜いてくれて、ようやく二人の間に腕の長さ分の隙間が出来た。

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