同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
幸いにも西田は滑り止めに、隣町にある私立の女子高に合格していたものの、学費や寄付金等で家計に負担がかかるから本当は行きたくなかったらしい。

西田には二歳年下の妹がいるのだが、妹がアレルギー体質で、通院治療費も馬鹿にならない。
俺達の住む街の子供に対する医療費負担は、当時はまだまだ遅れていて中学校に進学すると一律大人と同じ負担率になっていた。

当時は知らなかった事だが、アレルギーの治療通院は、薬代が結構な負担になるらしい。
それに加えて私立の高校に通う事になると、確かに家計にはかなりの負担になる。

卒業式が間近に迫ったあの日、西田に呼び出された時にその事を聞かされて、俺は取り返しのつかない事を仕出かしたのだと思い知らされた。

告白なんて出来ない。
こんな俺じゃ、西田に嫌われるだけだ。

西田に何故連絡網を回してくれなかったのか聞かれたけれど、俺は謝罪の言葉しか口から出なかった。

『嫌われる様な事したかな?』

違うよ、逆に大好きなんだと伝える事は出来なかった。


苦い初恋の思い出を抱えたまま、他に好きな子が現れる事なく今日まで何となく生きて来た。

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