同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
 そして、思い切ったように口を開いた。

「あのさ、その呼び方なんだけど……。
 そろそろ、名前で呼んでくれないかな、なんて……」

 坂本の声は、先程とは打って変わりかろうじで私の耳に届く位の大きさだ。
 きっとこれを言いたくて坂本は緊張していたのかも知れない。
 でも、今更何て呼べばいいのだろう。
 返事に困ってしまう。

「えっと……、何て呼んだらいい?」

 とりあえず、本人の希望の呼ばれ方を聞いてみよう。それを口に出来るかどうかは、その呼び方次第だ。
 私からの問いに、坂本は少し考えている。

「特にこれと言ってリクエストはないよ。ただ、付き合ってるのに『坂本』は、ないよなって思って。
 てか、今更だけど俺の名前知ってるよな?」

 まあ、確かにそうだ。付き合ってる彼氏なんだし、名前や愛称で呼ぶべきだとは思う。でも今までの呼び方で慣れていただけに、急に呼び方を変えるのは照れも入るし抵抗もある。

「うん、『悠太』だよね。じゃあ……、悠太くん、でいい?」

 私は何かまずい事でも言っただろうか、坂本は途端に口元を右手で覆い隠して横を向いた。
 そんな坂本の様子をおろおろしながら見つめていると、坂本も私の視線に気付いたのだろう、ようやく冷静になったのか、深呼吸をして正面を向き直した。
< 95 / 119 >

この作品をシェア

pagetop