···目覚め


そんなメイソンが、目を開けたのは
入院して一週間たった日だった。

この一週間
絢、アンソニーとエレナ、
メイソンのお義母さんは、
沙織に負担がないように
交代しながら
メイソンに付き添ってくれた。

その日
沙織は、朝、絢が来る前に
メイソンの顔や手を拭いていると
指先がピクンと動き
はっと、顔を見ると
瞼がヒクヒクしていた
『メイソン?!、メイソンっ!』
と、声をかけると
目が開き、ブルーの瞳は
天上を見て、また閉じた。
沙織は、ナースコールをしながら
『メイソン?!、メイソン!!』
と、名前を呼び
肩や手をさする
先生と看護師さんが来て
『ノアさん、わかりますか?』
と、何度か呼ぶと
目を少し開け
また、閉じる。

それを繰り返していたが
先生が聴診器をあて
肺の音を確認した。

音は、きれいになっているらしく
後は、レントゲンをとってから
と、なった。

パジャマの胸元を綺麗に
戻していると
『······サ····オ·······リ······』
と、小さな声で呼ばれて
メイソンの顔を見ると
メイソンの瞳から
涙が流れていた。

沙織は、涙をティッシュで
拭き取りながら
『きついの?苦しいの?』
と、優しく声をかけると
メイソンは、小さく首をふる。

『アンソニーが病院に運んでくれたの。
亜美ちゃんが、アンソニーに
知らせてくれたのよ。
そうでなければ、気づかなかった。』
と、話して聞かせると
メイソンは、凄く辛そうな顔をした。

沙織は、貴方はアンソニーにも
亜美ちゃんにも、ちゃんと
思われているから
心配ないよ
って、知って欲しかった。

メイソンが、レントゲンに
検査にいっているときに
絢が来て
沙織は食事をとった。

絢もメイソンが目を覚まして
ホッとしていた。

アンソニーやエレナ
そしてメイソンの両親にも知らせた。

沙織は、アンソニーに
「亜美ちゃんにも
メイソンの目が覚めた事を
知らせてあげて下さい。
もしよければ
お見舞いに来て下さい。」
と、言った。

アンソニーは、沙織の思いに
涙が出そうだった。

絢は、沙織を心配しながら
学校に行った。
沙織が
「心配ないよ。」
と、笑いながら言うから・・・

メイソンの両親も来てくれたので
沙織は、一度家に戻る事にした。

そんな沙織にメイソンは、
何か言いたいようだったが
メイソンのお義母さんが
『お腹、きついでしょ。
ゆっくりしてきなさい。』
と、言い
『ありがとうございます。』
と、言って沙織は
病院を後にした為
メイソンは、何も言えなかった・・

メイソンは、その日
眠りたくないけど
体は、中々言うことをきいてくれなくて
目が覚ましたままにはいかず
直ぐに眠ってしまう。

夕方に目を覚ますと
母親が心配そうに見ていた。
『····ママ···心配かけて·····ごめん···』
と、言う。

母親は、沙織の事で
息子を怒りたかったが
沙織との約束だったから
我慢をして
『自分の体を大切にしなさい。
そして、この先、自分が
どうしたいのか
どうあるべきなのか
良く考えなさい。』
と、言ってパパと帰って行った。

アンソニーは、
納得出来なかったが
アミにメイソンの事を伝えた。
サオリに頼まれたから
仕方なく。

行くか、行かないかは
関知しない・・・

夕方、病院に沙織が戻ると
病室に亜美がいたので
「あっ、来てくれたの?
ゆっくりしてね。」
と、言って荷物を置くと
出て行こうとした。

すると、メイソンが
『ここにいて。』
と、言い
『アミ、迷惑と心配をかけてしまい
申し訳なかった。』
と、言うと
『私、入院しているのも
知らなくて、すみません。
仕事は、何人か助っ人が来てくれて
いるので心配しないでください。

沙織さん、メイソンが目を覚ました
と知らせて頂いて
ありがとうございます。』
と、言うと
メイソンは、ハッと沙織を見た

どんな気持ちでアミに
俺が目を覚ました事を知らせたんだろう
と、思っていると
「いいえ。仕事を一緒にしていると
アンソニーに聞いていたから
知らせるべきと思ったの。
仕事の話もあるでしょ
何か飲み物でも買ってくるわね。」
と、微笑みながら言って
病室を後にした。

メイソンは、沙織の言葉が
堪らなく辛かった。

そんなメイソンに
『きついですか?』
と、アミは心配しながら言うと
『いや、大丈夫。
だが、少し疲れたから
帰ってもらっていいかな。』
と、言うと
『はい。気をつけて下さいね。
また、来ます。』
と、言って帰って行った。

沙織は、自販機の所で
時間を潰していると
アンソニーが、やってきて
『サオリ?』
『あっ、アンソニー。』
『どうした?』
『アンソニー、アミちゃんに
知らせてくれて、ありがとう。
嫌な役目をさせて、ごめんなさい。』
と、言うと
『来ているのか?』
と、言われたから
頷くと、アンソニーは眉間にシワを寄せた。
『アンソニー?』
と、沙織は声をかけるが
アンソニーは、答えずに
病室の方へと行った。
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