隠れイケメンの王子様に恋しました
フラれた!!!

こんな形で告白なんてするつもりなかったのに勢いで言ってしまってフラれるなんてどんだけ馬鹿なのよ私!

どうしようもなく落ち込んで顔を上げられなくてまた涙が込み上げた。
もう、消えてしまいたい……。
嗚咽を我慢していると、温かい物に覆われる感覚に気づいた。

「そのセリフは俺も同じ」

「へ…?」

耳元で声がして思わず顔を上げると眼鏡の奥で優しく微笑む大宮さんに包まれていた。

「好きだから、キスした。黙っていたのは、気付かない土谷が面白くて、つい…」

大宮さんはばつが悪そうに苦笑いを浮かべなの葉の涙を手で拭う。

「ば…ばかばかっ!面白がるなんてひどい!」

ホッとしてどうしようもなくてぽかぽかと大宮さんの胸を叩いてひしっと抱き着いた。
それをぎゅっと抱きしめてくれる大宮さん。

「ごめん、さっきも酷いこと言った。橋本に持ってかれると思ったら…」

ぎゅっと腕に力がこもって耳元で囁かれなの葉は気持ちが溢れて小さな声で言った。

「好き…好きです大宮さん…」

「俺も…好きだ、なの葉…」

誰もいない歩道、街灯が照らす中抱きしめ合う二人。

なの葉は爽やかな香りに包まれて幸せで夢なら覚めないでと切に願う。

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