起たたない御曹司君の恋人は魔女


 2人がホテルを出たのは深夜を回る頃だった。


 特に会話をしないまま駅前まで歩いて来た。


「家どこなの? 送るから」

「・・・いいです・・・」

「何言っているの、こんな時間だよ。家、遠いの? 」


「・・・ないから・・・」

「え? 」


「ないから、私の家なんて・・・」


 ギュッと唇を噛んで、リラは答えた。


「ないってどうして? 」

「・・・盗られたの、親戚の人達に。・・・母が・・・亡くなったから・・・」

「え? ・・・それじゃあ・・・」


「もういいから、先に帰って下さい。私は・・・どこか探しますから、泊まる場所」


 そっと背を向けたリラ。


 結沙はリラの手を掴んだ。


 ん? と結沙を見るリラ。


「それなら、俺の家に来たらいいよ」

「はぁ? 何を言っているの? 」

「俺の家の隣り、空いているから。そこに住めばいい。家賃もいらないし、高熱費もいらない
し、門限もないよ」


 なんなの? どうして、こんなに優しくしてくれるの? 


 握っているリラの手が少し震えていた。

 その手を結沙はギュッと握り締めた。
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