起たたない御曹司君の恋人は魔女


 ふと、結沙が勇と女性を見ると。

 女性は顔を伏せて、なんだか悲しそうな表情を浮かべていた。



 女性は勇を置いて立ち去った。

 勇は暫く、その場に佇んでいた。



 信号が赤になり車が通ってゆく。


「あ・・・そう言えば・・・」


 結沙はあの事故を思い出した。



 そう。

 この交差点はあの事故があった現場だ。



 結沙は良人と一緒に歩いてきて、携帯電話を拾った。


 すると、交差点で血まみれになって倒れていた女性を発見。

 携帯電話の向こうは若い女性の声がした。

(許さないから! )

 最後に女性が結沙にそう言った。


 時々、その女性の声を思いだす。


「あの人・・・どうしているのかな? …伝えたい事、あるのに…」


 結沙は空を見上げた。

 特に曇ってもいないのに、雪が舞い降りてきた。


 少しずつ雪は弱まり止んだ。




 交差点にもう勇はいなかった。



 
 歩いて行く結沙。


 交差点で立ち止まり、ふと交差点向かい側のビルを見上げると・・・。


「え? 」


 驚いた結沙が目にしたのは、屋上にいる勇。

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