Before dawn〜夜明け前〜
「やめて下さい！」

不意に女性の大きな声にいぶきは振り向いた。
いかにもヤクザ風の男が店の女の子にちょっかいを出している。

「ちょっと、ごめんね」

いぶきに断りを入れるとルリママがサッと現場に駆けつける。

「ありゃ、相当酔ってるな。桜木組のモンじゃなさそうだが。
黒川、どうする？」

矢野もしかめっ面でその様子を見る。

「黒服に止められなければ、出ます。
あんまり俺が出しゃばってもマズイ」

黒川は、いつでも出られるようにスタンバイしながら様子を伺った。



「いいじゃねーか。減るモンじゃなし、触らせろよ。金ならあるんだからよー」

「お客様、ここを何処だとお思いですか？」

そう言ったルリママを突き飛ばし、男は座った目つきで女の子ににじり寄る。

黒服の従業員が男を取り抑えようとしたが、男は何か武術の経験でもあるのか、簡単に振り払われてしまう。


「やめてください」


我慢できず、その女性の前にサッと立ちはだかったのは、いぶきだった。


「なんだ、テメェ」

「だいぶ、お酒をお召しのようですね。少しお休みになったらどうですか？」

「テメェ、このオレに説教たれようっていうのかぁ？
ん？
よく見りゃ可愛い顔してんじゃねーか。よし、お前でいいや」

ガバっと男がいぶきに抱きつこうとした。が、いぶきはそれをひらりとかわした。
男はテーブルを倒して床にたおれる。

その隙に黒川が男を拘束しようとした。

「このやろ！」

男は黒川に近くにあったワインのボトルで殴りかかる。黒川が避けた拍子にをボトルがテーブルの角に当たって割れた。



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